ゴムボタンのクリック感の調整方法

製品名ゴムボタン
金型上下2枚金型
材料シリコーンゴム 硬度各種

ゴムボタンのクリック感

テレビやエアコンのリモコン、電卓などのボタンを押した瞬間に「お、気持ちイイ!」と思われた経験はありませんか?ユーザが使っていて「気持ちイイ!」と感じることは製品の1つの付加価値につながります。また、設計・開発する方々としてもクリック感や触感をコントロールしたいと思われている方は多いのではないかと思います。そこで、今回はゴムで作るボタンのクリック感、触感に関するノウハウをご紹介します。

身の回りのスイッチ、ボタンにはゴム製の部品が採用されていることが多々あります。皆様ご存知の通り、ゴムは力を加えると形が変形し、加えていた力を戻すと元の形状に戻る性質を持っています。この性質のことを「弾性」と呼びます。

弾性を持ったシリコーンゴムなどを操作ボタンに採用することで、人がボタンを押した際に柔らかさを感じます。

柔らかいボタン、硬いボタン、人の好みはそれぞれ異なりますが、ゴムボタンのクリック感は形状設計や材料の硬度によって調整することができます。ここでは、ご要望に合わせたクリック感を実現するためのゴム部品のものづくりノウハウについてご紹介します。

求めるクリック感

お客様のご要望に合わせたゴムボタンのクリック感を実現するために、まずはボタンがどのような機器に搭載されるのか、などといった使用用途を詳しくヒアリングします。そして、ユーザがボタンを押した際にボタンにかかる想定荷重や押し込む際のストローク量、クリックなど、どのような押し感を求めているかを確認していきます。この際に想定荷重やストローク量などが数値でわかっていると、ものづくり後の評価を定量的に行うことができます。

スカート形状の設計

シリコーンゴムボタンでクリック感を調整するためには当社でスカートと呼んでいる形状の設計が非常に重要なポイントとなります。スカート形状はボタンを押し込んだ際に上下に可動する役割を持っています。

ご要望のクリック感を表現するためにスカートの形状や厚みの調整を行います。厚みによって上下の可動量が変化するため厚ければクリック感は重くなり、薄ければ軽くなります。

この部分の厚みはゴムボタンの耐久性にも影響を及ぼすため、ユーザがこの製品を使用する上で何回くらいクリックするか、ということもスカート形状の設計においては重要な要素となります。

3Dデータ作成

ゴムボタンやスカートの形状が決定した後は、3D-CADにてゴムボタンの3Dデータを作成します。部品は金型を使って成形加工を行うため、抜き勾配を設置した際に極端に肉厚が薄くなり部分ができていないか、金型から部品が離型する際に破損するリスクがないかなど、ご要望通りの部品加工ができるかを入念に確認します。

3Dデータが完成した後は、3Dデータから図面を作成し、必要な寸法や公差を書き込みお客様にご確認を頂いた上で金型の作成を行います。

金型作成

ゴムボタンに金型から部品を離型する際に必要となる抜き勾配を設置した3Dデータに対して、ゴム材料の収縮率を掛け合わせて金型加工用の3Dデータを作成します。

ゴムボタンは金型の上型、下型の中にできた空間にゴム材料を投入して成形するため、上型で加工する形状、下型で加工する形状、上型と下型がズレないように合わせ込むための機構などを考慮した上で金型を設計し、パーツを加工し、組合せを調整し金型が完成となります。

クリック感の調整を行うために、スカート形状の厚さを調整することが重要となります。そのため、スカート形状の金型については削り加工で調整することを前提として金型設計・加工を行うことが重要となります。

削り方向で調整することを前提とする加工する理由についてですが、金型は削る分には比較的簡単に調整を行うことができますが、もし削りすぎてしまった場合は元に戻すためには溶接して肉盛りを行う、別金属パーツを差し込む、金型を作り直すなどの非常に大掛かりな作業とロス費用が発生します。

このようにゴムボタンのクリック感を調整するためには金型の作り方も重要になっていきます。

成形加工・材料硬度による調整

金型が完成した後は、金型内にゴム材料を投入し、コンプレッション成形機を使って部品加工を行います。コンプレッション工法については以下に参考動画がございますので興味がある方はご参照ください。

ゴムの材料にもさまざまな硬度が存在します。ゴムの硬さは測定器などによって表現が異なりますが、ISO国際標準化機構やディロメーター(ショア)などに沿って表現されることが多いです。ゴムの材料硬度の違いによってもクリック感の調整を行うことができますので、金型機構後は実際にさまざまなゴム硬度の材料で成形し、クリック感の比較検証を行います。

設計・金型によるスカート形状の調整、さまざまなゴム硬度を持つ材料での成形、これらの2つの要素を組み合わせることでご要望とするクリック感をもつゴムボタンを実現することができます。

これらがゴムボタンのクリック感の調整を実現するものづくりのノウハウです。